読み終わった後、しばらく天井を見つめてボーっとした。
社会人になって小説を読むことが増えましたが、読書後にここまで寂寥感、満足感を味わえた作品は珍しい。いい作品はついつい時間を忘れてページを進めてしまいます。
登場人物に怒ったり、同情したり最後には自分の過去の恋愛を思い出してしまうようなそんな作品。
今日はそんな一冊、「汝、星の如く」を紹介します。
作品の基本情報
著者:凪良ゆう
出版:講談社/2022年8月
受賞:本屋大賞2023年大賞
凪良ゆうさんは「流浪の民」でも本屋大賞を受賞しており、2度の大賞受賞という快挙を達成した作家さん。ジャンルは恋愛小説で、「恋愛小説が苦手」な人にこそ読んでほしい一冊。
ページ数は約460ページとボリュームがあるけれど、読み始めたら止まらなくて気づいたら3時間経っていた。それくらい引き込まれる。
あらすじ・ネタバレなし
舞台は瀬戸内の小さな島。
母親の恋人を追って島に引っ越してきた高校生・櫂と、島で生まれ育った暁海。ふたりは出会い、惹かれ合い、やがて深く愛し合うようになる。
でもふたりの恋には、最初から「重さ」があった。
暁海には離れられない事情があり、櫂には東京で叶えたい夢がある。愛しているのに、一緒にいられない。自由にしてあげたいのに、手放せない。
この物語は、そんなふたりが「愛すること」と「生きること」の間で揺れ続ける話だ。
ハッピーエンドかどうかは、ぜひ読んで確かめてみてください。必ず読み終わったとき、きっと誰かに連絡したくなる。
読んでいて刺さったポイント
「愛」という抽象と、現実の重さとの差
物語の中で、櫂と暁海はそれぞれ家族という繋がりに苦しみながら生きている。
暁海は母を捨てることができず、櫂との距離を縮められない。それが2人の関係に、じわじわと影を落としていく。
「なぜ彼についていかなかったのか」と思う読者も多いはずだ。でも私には、彼女を責める気にはなれなかった。親だから。血が繋がっているから。そんな言葉にならない「呪い」が、彼女を島に縛り付けていたように感じたから。
これは現実でも思い当たる人が多いんじゃないだろうか。家族という枠組みは、愛情であると同時に、時に逃げられない鎖にもなる。「愛している」という気持ちだけでは越えられない現実の重さを、この物語はとてもリアルに描いています。
言葉にしないと、伝わらない
この作品は主に2人の視点が交互に描かれ、それぞれの心理描写が丁寧に積み重なっていく。
あるシーンで片方がどう感じていたか。そして何年も経ったあとに、あの時なぜそう言ったのかが、もう一方の視点でようやく回収される。あの時はわからなかったことが、時間が経ってから「そういう意味だったのか」と腑に落ちる構造。
読んでいて、過去の自分の恋愛が頭をよぎった。
過去の恋愛は美化されがちだけど、特に男は後悔や未練を引きずりやすい生き物だと思う。「あの時こう言えばよかった」「伝えておけばよかった」そんな感情を、この物語はうまく刺激してくる。
過去は変えられない。でも今この瞬間、伝えたい人がいるなら伝えてほしい。この本を読んで、素直にそう思った。
登場人物の背景が、繊細すぎるほど丁寧に描かれている
この物語には、主人公2人以外にも印象的なキャラクターが多い。
中でも私が特に好きだったのが、2人の恩師である北原先生だ。
理知的で落ち着いていて、「こんな先生、実在するのか?」と思うほど暁海に的確なアドバイスをくれる。でも決して感情的に同情はしない。寄り添いながらも一定の距離を保つその接し方が、読んでいてとても居心地よく感じた。
先生の過去については続編「星を編む」で描かれており、1作目を読み返すとまた違った見え方になる。2冊セットで読んでほしい理由のひとつです。
一方で、個人的に一番「憤怒」したのは櫂のお母さんです。
ただ、お母さんの過去が深掘りされなかったのは、正直よかったと思っている。「こういう過去があったから依存的になった」と説明されてしまうと、どこかモヤモヤしてしまう気がする。
子供にとって、親の事情は関係ない。どんな背景があろうと、傷つけられた事実は変わらないから。
こんな人におすすめ
正直、万人におすすめしたい。そう思えるほどの良作でした。あえて言うなら、特にこんな人に読んでほしい。
後悔や罪悪感ごと、受け止めて前に進めるかもしれません。
どちらを選んでも、今を生き抜くことの大切さを感じさせてれた。
最近、しんどいけど泣けない人、恋愛でつらいけど気持ちがたまっている人。
そんな人には、ぜひ読んでもらいたいです。
まとめ
「汝、星の如く」は普通の恋愛小説とは一味違う良作でした。
ページ数は300ページ超えと多く感じるかもしれないが、文章が読みやすく圧倒的なスピードで読み終えてしまう。普段小説をあまり読まない人や、文章が苦手な人にこそおすすめしたい一冊です。
恋愛を軸にしながら、ヤングケアラーや誹謗中傷といった現代の問題も丁寧に描かれている。今を生きる若者にこそ読んでほしいと思います。
愛することの重さ、家族という呪い、言葉にしないと伝わらないもどかしさ。どれも現実の自分と地続きで、読んでいる間ずっと他人事に思えなかった。この感覚は誰もが持っていて、年齢を重ねるほどより濃密に感じるものだと思う。そんな抽象的なものを文章で描いてしまう凪良ゆうさんに、純粋に惚れ惚れした。
読み終わった後は、ぜひ続編「星を編む」もあわせて手に取ってほしいです。1作目とはまた違う角度から、同じ物語が深まっていく。
久しぶりに、読んでよかったと思える本に出会えた気がする。

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